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小笠原旅行記28・憧れの南島 沈水カルストの絶景の島 【東京都・島旅・ファミリー】
船はゆっくりと南島の動力船の上陸ポイント、「鮫池」の中へと入ってきた。
ついに、この小笠原の旅で最も僕が行きたくて行きたくてたまらなかった場所、「南島」への上陸。
この島への上陸は念のために2回スケジュールを入れておいた。
それほどしてまで行きたかった場所。昨日は海況が悪く海にさえ出れなかったので、その保険が今日、機能した形になる。
鮫池という名だが、それは陸地に囲まれた海で、ここに人が住んでいれば間違いなく天然の良港となる。
今まで濃紺で吸い込まれそうな色の海が、この中に入ると目が覚めるようなエメラルドグリーンの色になった。
波もとても穏やかで、先ほどまでは船の上で立つこともままならなかったのがウソのようだ。
船を接岸する護岸などはないので、上陸は直接船の船首を岸に着岸させる。
ガイドが船を押さえている間に、乗客は岸へと乗り移る。
ついに、南島上陸だ。
上陸したらツアー客はガイドのもとに集合する。
この南島は貴重な生態系と自然を残す島。この島の滞在には、とても厳しいルールが課せられる。
ある意味、日本でも一番立ち入りが制限された場所でもある。
その厳しいルールは以下の通り。
【南島の入島ルール】
◆決められたルート以外の立入禁止
◆最大滞在時間は2時間
◆1日当たりの入島制限人数100人
◆11月から翌年1月末までは入島禁止(年末年始は除く)
◆東京都認定ガイドの同伴無き者の入島禁止
◆東京都認定ガイド1人が担当する利用者の上限は15人
◆動植物、岩石、樹木などの採取・移動・破壊破損は絶対禁止
◆ゴミは捨てずにすべて持ち帰る
◆外来種・移入種の動植物を持ち込まないように対策を講じる
◆動物に餌をあげたり驚かせたりしない
常識的なルールもあるが、この島は厳しい制限を課し、この美しい自然を未来永劫そのままの形で残そうと努力されている。
ガイド同伴が義務付けられているため、この島には個人では上陸できず、必ず、東京都認定ガイドが在籍するツアーに参加しないといけない。
当然のことながら、船はツアーのチャーターとなり、この島への公共交通機関は皆無だ。
全員が下船したら、ガイドの案内で南島内部へと歩いて行く。
南島は「沈水カルスト」という地形で形成されている。
サンゴ礁の隆起、沈水によってできた島で、日本ではこの島だけ。
世界中探しても、あと1か所しかないという、とても貴重で珍しい地形だそうだ。
歩いていて気になるのはその岩肌。石灰岩むき出しの岩肌は、尖った刃物のようでまさに凶器。
素足や露出の多いサンダルでの上陸はとても危険なので気をつけたい。
さて、水辺から坂を登ると島の内側が見えてきた。
まるで盆地のようにくぼんだ島の内部には真っ白な砂が敷き詰められていて、その奥には「陰陽池」という池がある。
その石灰岩だらけのカルスト地形のためか、高木は根を張れず、まるで森林限界を超えた高山池のような様相がここにある。
しかし、この池には時々海ガメが迷い込むという、海のすぐそばの風景なのである。
ふり返る鮫池。その美しいエメラルドグリーンの水の色は何度見ても美しい。
この鮫池の名前の由来は、船が着岸した湾の奥の岩陰に、よく「ネムリブカ」というサメが寝ているからだそうだ。
残念ながらこの日は探してみるもその姿はなかった。
船を下りてすぐの場所に赤土が露出した場所がある。
多くの人が訪れるために地面が崩れてしまったそうで、今は島内の岩や芝生の移植で植生が回復しつつある。
しかしガイドいわく、何度作業をしてもどうしても崩れるそうだ。
もしかしたら、この下にまだ発見されていない海中鍾乳洞があるかもしれないという。
確かに、この南島の地形は地上にあれば、秋吉台などの鍾乳洞が多数点在するカルスト地形。
島の地下に鍾乳洞があっても何ら不思議ではない。
この美しい島の地下に、美しく青い水を湛えた洞窟が眠っているかもしれない。
それを考えただけでも、何とも神秘的ではないか。
鮫池から登りきった峠に到着した。ここからは島の内部が一望できる。
そして、先ほどまで見えなかった、山肌に隠れていたぽっくりと穴があいているビーチが姿を現した。
これが小笠原を代表する風景、「扇池」だ。
南島にずっと上陸したかったのも、このビーチに行きたかったから。あの美しいビーチに行きたかったから。
ビーチに降りて行く道が細い線になって、島に描かれている。
「今日は扇浜に行く時間がないので、この上の丘から島を眺めたら帰ります」
・・・
????
「今、なんとおっしゃいました?????」
僕はここでツアーのチョイスに失敗したことに気づいた。
参加したPAPAYAのツアーはクジラ・イルカのウォッチングがメインのツアーだ。
母島への上陸があるとても至れり尽くせりのツアーでもある。
そんな至れり尽くせりなのだから、南島にかける時間はとても少ないのだ。
ちょっと欲を出したことが大失敗につながったと後悔してもすでに遅い。
この島はガイド同伴が義務付けられている島。
勝手に扇池に単独行動で降りて行くわけにも行かず、残念に感じながらも、扇浜から遠ざかる道へと入っていく。
ナイフのような石灰岩がむき出しの山肌を登って行く。
結構急な坂道だ。ふり返ると鮫池。
このエメラルドグリーンの海からそそり立つ険しい緑をまとった岩肌。
まさにそれは、南国でも滅多に見れない、美しい風景。
この風景はここが日本であることを忘れさせてくれる。こんな場所は日本の中でもここだけにしかない。
いや、日本でもただ一つ、僕が知っている場所でも同じような風景を見れるのはただ1か所だけ。
日本最西端の島、沖縄八重山諸島の「与那国島」のみ。
テレビドラマの「Dr.コトー診療所」の舞台となったあの島も、こんな美しい風景だった。
坂を登りながらも、何度も憧れの扇浜のビーチに目を奪われる。
島を取り囲む岩壁の1か所に穴があき、そこから島の内側が侵食され、美しい白い砂浜になっている。
青い水と美しい白砂のコントラストはこの世のものとは思えない。
曇り空でもこんなに美しい。
ここはカヌーなどの人力船の上陸ポイント。
周囲が岩肌の断崖絶壁に囲まれた要塞のような場所で唯一、美しいビーチを持つ。
本当は昨日、ここからカヌーで上陸したかったのだが、この波のためにそれはままならなかった。
ようやく南島を見渡せる小高い丘の上に到着した。
曇り空が残念だが、ここからは父島の姿も見渡すことができる。
父島も断崖絶壁が続くとても荒々しい島であることがよくわかる。
カメラを200mm望遠側にして、父島の海岸を切り取ってみる。
青い海に美しいコントラストを描く白亜のビーチは「ジニービーチ」
そのうつくしさは父島随一と言われるビーチには車で行くことはできない。
車で行ける最南端の小港海岸から、1時間半以上も山道を歩くか、シーカヤックで海を突き進む。
そうしないとたどり着けないビーチだが、そのあまりもの美しさに、この場所を訪れる人は絶えない。
父島と南島の間の海域も沈水カルスト地形。波に浸食された島がいくつも海の上に顔を出す。
先ほどは船の上でここを進んだが、とても不思議な海域だ。
一番奥に見えるのは父島の南側の海岸線。
高さ250mにも達する断崖絶壁が青い海に落ちている様は絶景だ。
写真中央、岩肌が赤くなった場所は「千尋岩」と呼ばれる。
これは岩肌がハートの形に見えるので、「ハートロック」とも呼ばれる。
もちろん、父島にいると見ることはできず、船やカヤックの上からしか見ることができない。
見下ろす南島。
左のエメラルドグリーンが「鮫池」
右のエメラルドグリーンが押し寄せる白いビーチが「扇池」
横に一文字に走るのが、この島に唯一許された歩けるルートだ。
丘の上に立つと、突然雲の切れ間から太陽の光が降り注いできて、扇池を美しく照らした。
なんと素晴らしい風景。このビーチに立てないのを少し神が憐れんでくれたのだろうか。
立ち込める暗雲を静かに、しかしながら急激に払い始めた。
真っ白な砂のビーチに何度も何度も押し寄せる青い海。
この世の楽園のような美しいビーチ。
ああ、この青いビーチで思いっきり泳いでみたかった。潜ってみたかった。
しかし、こうやって遠くから見ているだけでもとても心落ち着く不思議な場所。
あまりもの不思議で美しい光景は、この世界のものとは思えないくらいだ。
ちなみにこの扇浜は、宮崎駿監督の「紅の豚」の主人公の隠れ家のモチーフとなった場所だと言われている。
あの外海とつながるトンネルから水上飛行艇が入ってきて、島の中に停泊する。
そしてこの白亜のビーチでゆっくりとくつろぐ。
実際にはあのアーチは飛行機はくぐれないが、カヤックはくぐれる。
今度はあのアーチをカヤックで通り抜けて、白い砂浜に上陸して、ゆっくりとくつろいでみたい。
ちなみにあの扇浜の美しい砂浜には、1000万年以上前に絶滅した「ヒロベソカタマイマイ」の貝殻の化石がいっぱいあるそうだ。
その化石を入れて美しい青い海が打ち寄せるビーチの砂浜を写した写真も有名。
ただし、南島のルールに基づけば、その化石も絶対に採取は禁止。
あっという間に南島の滞在時間は終わった。
非常にもガイドの「帰りますよ」という一言で、一行は下山を開始した。
スポットライトのように照らされる陰陽池がとても美しい。
本当に、森林限界を超えたようなアルプスを思わせるような風景。
その美しい風景が、美しい青い海のすぐ上に広がっている。
もう一度振り返る扇浜。
何度見ても飽きない。何度見ても美しい。
・・・
また来るからな。絶対今度はゆっくりと来るからな~。
ふり返る南島の内部。それにしても本当に美しい砂浜だ。
あの岩肌に穴が開いてから、長い時間をかけて海が島のサンゴ礁を削って削って・・・
そしてやっと今のような姿を作りだしたのだろう。
長い長い地球の時間と、地球の気まぐれによって盛り上がった島が作り出したまさに奇跡の風景。
永遠とも感じる時の営みを感じる場所、ものの30分しか滞在出来なかったのはとても残念だ。
さて、最後にこの島のルールを守られているかどうか。
ちゃんと監視する人がいた。
動力船の入口となる場所には船を浮かべて入島する人をカウントしているのだろうか。
島内にも監視する方が3人、ルールを、そしてこの自然が守られているか厳しい目を光らせていた。
この美しい自然がいつまでも続くように、そして今度はもっとゆっくり燃料を使わずに自力で・・・
再度の訪問を誓って、このエメラルドグリーンの海の上で待つ船に乗り込んだ。
ゆっくりと美しい島から離れていくエンジン音が、とても悲しい音に聞こえた。
【南島】
■My評価(5段階)
★★★★★(5.0)
南島に上陸するには東京都認定ガイドの同伴が義務付けられています。
父島のツアー会社に、自分にあった内容のツアーを申し込んでください。




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