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小笠原旅行記32・母島東港シュノーケル 【東京都・島旅・ファミリー】
野生のイルカとの触れ合いが終わり、海に飛び込んだ参加者の回収作業が続く。
ご覧のとおり、海はかなり荒れているので、母船のクルーザーまで泳いで帰ってくるのはなかなか骨が折れる。
僚船の漁船タイプの小型船が海にいる参加者を引き揚げ、母船に近づいてから参加者はそこから再び海を泳いで戻ってきた。
その間、海に入らなかった僕たちは、小笠原の海、母島の荒々しい岩壁の姿を眺めていた。
岩壁の波打ち際には大きな穴がいっぱい開いている。
太平洋を揺るがす大波があけた穴。そのすざまじいエネルギーは時々乗っている船を襲う。
そして、波しぶきをザプザプと一眼レフにかけてくる。
一撃食らえば、僕の2年間の小遣いがぶっ飛んでしまう。怖いっ。
全員が船に戻ったら、船は母島を時計回りに走り始めた。
母島の最も北の岬でイルカに遭遇したので、北から東海岸を走って行くルートだ。
その美しい母島の姿をいっぱい一眼レフで収めたかったが、飛んでくる波しぶきのためにカメラはもう使えない。
慌てて、防水バックの中に収納する。しかし、この大波の中のイルカの撮影で、もう一眼レフは潮で真っ白になっている。
大丈夫かなぁ・・・
島の東海岸を南下する。
深い緑に荒々しい岩肌。そして、それらに打ちつけられる、荒々しい海。
常夏の小笠原も、冬には厳しい北風が吹きつける。
荒々しい海の様子だけは、日本の海と変わらない。船の中にも容赦なく波しぶきが飛び込んでくる。
さて、こんな水しぶきに濡れる過酷な環境の中で撮影は、普段はサブカメラとして使っているコンパクトデジカメが頼りだ。
オリンパスμ720SWという機種を使っているのだが、何の準備もなくても3mまでの潜水が可能な防水カメラ。
1.5mの高さから落下させても壊れないという、アウトドアで使うのにはもってこいの相棒だ。
水しぶきの中やシュノーケルの撮影ではこれで十分。今回の撮影でもそのタフさを発揮してくれた。
しかし、参加者の持っているカメラは30~40m潜水できるプロテクターを装備させている人がほとんど。
最低の防水機能は、μ720SWの後継機種で10m潜水ができる機種だった。
みんな気合い入っているなぁと感心していたが、この「3m」と「10m以上」という防水性能の差が大きな壁になることをこの後実感することになる。
母島も父島と同じく海底火山の噴火によってできた島。
そのため、島の岩肌は荒々しく、長年の侵食によって奇岩が形成されている。
海の上を走りながら、刻々と変わっていく島の表情は見ているだけでも飽きない。
それどころか、どんどんとその表情の豊かさには惹きつけられていく。
大きな入り江に入ってくると、先ほどまでの波の高さが嘘のように静かになった。
そして、船はゆっくりと速度を落とした。
船長からここでシュノーケルを楽しんでくださいとアナウンスがある。
イルカはいないが、参加者は待っていましたと次々と青い海の中に飛び込んでいく。
ここは「東港」という場所。
周囲には集落はなく建物も何もないのだが、なぜだか立派な防波堤だけが作られている。
戦前にはこの付近には集落があり、返還後も昭和末期までここを基地にして捕鯨がおこなわれていたそうだ。
今は住む人もいない場所だが、国際避難港として整備の工事が進められていると船長から聞く。
確かに、母島の中心地の港には大きな船が入れない。
この大海原で荒れる海を回避できる場所は、絶海を行く船舶にとっては天国だろう。
恐ろしいほどに青い小笠原の海。
まるでブルーサファイアのような海の色は、本当に宝石の色。
この惑星の宝石、すべての物を産んだ母なる海。
美しい海の色を見ていると、どうしても海に誘われる。
南国の海は暖かいとはいえ、強風吹くポートの上はまだ寒い。
ラッシュガードを着ているので海の中は大丈夫だが、そのあとの移動はとても寒いだろう。
そう思って、もう今日は海に入るのはやめようと思っていた。
なので、デッキの後ろから持ってきたゴーグルでその美しい海の中をのぞいてみる。
相当水深はあると思われるのに、はっきりと海底のサンゴ礁が見える。
なんという水の透明度だ。
折からの悪天候と強風で、海の中は濁っているはずなのに、それでもこの美しさ。
恐らく、日本の中でも最も美しい海の色だろう。
この美しい海の中を見た瞬間、僕の中のスイッチが入った。
気がつくと、後部デッキに戻り、ジャケットを脱ぎ捨てシュノーケルを装着していた。
「え?入るの?」
妻が驚いている間に、僕はこの小笠原の青い海に抱擁されるように、その身を海に投げ込んだ。
小笠原に来て、何度も試みてきた2008年の初泳ぎを、この時にやっと達成した。
1月の小笠原の海は、ラッシュガードを着ているとはいえ、びっくりするくらいに暖かかった。
海に落ちて心臓麻痺する人はおそらくいないだろう。
少し涼しい夏の日にプールに飛び込んだくらいの冷たさしか感じない。
船の上から見るより、サンゴ礁は近く見える。とても美しい。
僕は国内でダイビングもする(していたの方がもはや正しい)が、こんなにサンゴが群生している場所は初めて見た。
浅そうに見えるが海は深い。
海面に浮く参加者と比べてみると良くわかるが、海底ははるか下だ。
水深は推定で7~8mほど。
こんなに深いところで泳ぐとは思っていなかったので、フィンは持ってこなかった。
フィンなしで海底まで潜るのは至難の業だ。
しかも僕の持っているカメラのμ720SWの潜水可能深度は3m。海底までの潜水は不可能だ。
しかし、僕以外の参加者は、この大荒れの海の中をイルカと一緒に泳げる猛者たち。
おまけにウェットスーツとフィンで完全武装している。
まるでイルカのようにドルフィンスイムで海底まで潜り、みんな気持ちよさそうに海中を泳いでいる。
その姿はとても美しい。
中には2分近く難なく潜り続けたり、バブルリング(息で泡の輪っかをつくる)を披露する人も。
まさに海人。よくテレビで熟練の素潜り漁師の技を見るが、これに近い。
本当に同じ人間かと思うほど、みんな海の中を自由に泳ぎまわり、この美しい小笠原の海を楽しんでいた。
なるほど、だからみんな、10m以上の潜水機能のあるデジカメを用意していたのか。
今やっとはっきりと理由がわかった。
3mの潜水機能しかないデジカメと30秒の潜水がやっとの身体能力の僕。
とても大きな違いをまじまじと見せつけられた瞬間だった。
ジャックナイフで潜水して、美しい海底に近づきたいが、それをするとカメラを壊してしまう。
船にカメラを戻そうとも思ったが、船は知らないうちに随分と遠くに離れている。
フィンなしで簡単に戻れる距離ではなかったので、カメラを水から上げることはあきらめた。
もちろん、カメラは水に浮かないので、手を離せば、深い海底に沈んでしまう。
とはいえ、浮き輪もなしに、こんな深い海を平気で泳いでいられるのも小さい頃に通っていたスイミングの賜物。
ここは海底への接近をあきらめて、海面からいろんな海の景色を見ることに専念しよう。
とても美しい枝サンゴの群生。まるで竜宮城に竜宮城にいるみたい。
こんな美しいサンゴの森が、この海にはどこまでも続いていた。
立派なテーブルサンゴも広がっていて、母島の海の中は多様な美しさを見せてくれる。
本当に何の制限なく、この美しい海を魚のように泳いでみたい。
そのために必要な装備と身体能力が僕に無いのが歯がゆく思えた。
ふと気がつくと、船に置いてきたはずの妻も海の上に浮きながらこの世界を楽しんでいた。
妻はちゃっかりライフジャケットまで借りてきている。さすがだ。
サンゴの中には魚たちがいっぱい泳いでいる。
美しくこの海と同じような宝石色をした魚から、地味な色の魚まで。
悲しいかな、今日は深すぎて接近してその姿を拝めない。
しかし、ゆっくりと優雅に泳ぐ魚の姿を遠くからでも見ていると、とても不思議に心が休まる。
さあ、そろそろ時間だ。船に戻らないと。
他の参加者はまだ海で遊んでいるが、フィンを履かず、泳ぎも遅い僕たちは先に向かわないと・・・
下ばかり向いていてはわからないが、水平方向を見てもその透明度は抜群。
小笠原の海は、とにかく青かった。
蛇足だが、小笠原から帰ったのち、僕が10mの潜水機能を持つ後継機種のカメラに買い替えるのに、時間はさほどかからなかったことは言うまでもない(笑)
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